2026年現在、SSD市場はPCIe 4.0が標準となり、選択肢は無限にあるように思えます。
その中でも、コストパフォーマンスを重視するユーザーから熱い視線を浴びているのが、Western Digitalの「WD Blue SN580」と「WD_BLACK SN770」です。どちらも非常に人気のあるモデルですが、価格差が縮まっている今、「結局どっちを買えばいいの?」「安いSN580で十分?それともSN770にすべき?」と迷ってしまう方は多いはずです。
この記事では、カタログスペックだけでは見えてこないコントローラーの挙動や、PS5での実用性、発熱の違いまで徹底的に比較し、あなたのPC環境に最適な一台を提案します。
記事のポイント
- WD SN580とSN770の決定的なスペックの違い
- DRAMレスでも快適に使えるHMB技術の秘密
- PS5増設やゲーミング用途での向き不向き
- 発熱や実売価格から見るコスパの最終判断
WD SN580とSN770のスペック比較と技術的な違い

Western Digitalが誇るこの2つのSSDは、一見すると似たようなスペックに見えますが、内部の設計思想には明確な違いがあります。ここでは、カタログ数値の裏側にある技術的な差異を深掘りしていきましょう。
コントローラーとNANDの独自設計
この2モデルの最大の特徴は、コントローラーからNANDフラッシュ、ファームウェアに至るまで、すべてをWestern Digital(SanDisk)社内で完結させている垂直統合型であるという点です。
多くの格安SSDが、他社製のコントローラーとメモリを組み合わせた「寄せ集め」で作られているのに対し、WD製品は自社パーツ同士の相性が完璧にチューニングされています。
どちらも「BiCS5」と呼ばれる112層の3D TLC NANDを採用しており、成熟した技術による高い信頼性とコスト競争力を両立しています。
SN770のコントローラーはゲーミング向けに低レイテンシ(反応速度)を重視して調整されており、SN580のコントローラーはそれをベースにしつつも、電力効率とコストダウンを優先した設計になっています。
DRAMレス設計とHMB容量の差
両モデルとも、コストを抑えるためにDRAMキャッシュを搭載しない「DRAMレス」設計を採用しています。「DRAMレス=遅い」というのは過去の話で、現在はPCのメインメモリの一部を借りるHMB(Host Memory Buffer)技術により、高速な動作を実現しています。
実はここで、SN580が意外な健闘を見せています。
| モデル | HMB割り当てサイズ | 特徴 |
|---|---|---|
| WD_BLACK SN770 | 約64 MB | コントローラー性能が高いため、少ない領域でも高速処理が可能 |
| WD Blue SN580 | 約200 MB | より多くのメモリを借りることで、コントローラー性能をカバー |
SN580はSN770よりも広い領域(約200MB)をメインメモリ上に確保します。これにより、WebブラウジングやOfficeソフトの起動といった日常的な軽作業においては、上位モデルであるSN770に肉薄するサクサク感を実現しているのです。
最大転送速度とPCIe 4.0帯域
わかりやすい性能差として表れるのが、シーケンシャル(連続)読み書き速度です。
- WD_BLACK SN770:最大読込 5,150 MB/s
- WD Blue SN580:最大読込 4,150 MB/s
SN770はPCIe 4.0の帯域をよりアグレッシブに使い切る設計になっており、大容量の動画ファイルの移動や、巨大なゲームデータのインストール時においては、SN770の方が明確に速さを感じられます。とはいえ、SN580の4,150MB/sという数値もSATA SSDの約7倍の速度であり、一般的な用途で遅さを感じることはまずありません。
キャッシュ切れ後の書き込み速度
大容量データを一度に書き込む際、SSDは「SLCキャッシュ」と呼ばれる高速化機能を使います。しかし、このキャッシュを使い切った後の挙動には注意が必要です。
検証データによると、キャッシュ切れ後の書き込み速度は両モデルとも約545MB/s〜560MB/s程度まで低下します。これはNANDフラッシュ自体の物理的な限界によるものです。
数百GB単位のバックアップなどを行う場合、SN770であっても最終的な速度はSN580と変わらなくなります。常時高速な書き込みが必要なプロの映像編集者は、上位のSN850Xなどを検討すべきでしょう。
耐久性TBWと保証期間の比較
データをどれだけ書き込めるかを示す寿命の指標「TBW」において、2TBモデルで大きな差がつきます。
| 容量 | WD Blue SN580 | WD_BLACK SN770 |
|---|---|---|
| 1TB | 600 TBW | 600 TBW |
| 2TB | 900 TBW | 1,200 TBW |
1TBモデルまでは同等ですが、2TBモデルに関してはSN770の方が約1.3倍も耐久性が高く設定されています。長く安心して使いたい場合、特に2TBを検討しているならSN770の方が信頼性は高いと言えます。なお、保証期間はどちらも安心の5年間です。
WD SN580とSN770の実用性能とおすすめの選び方

スペックの違いを理解したところで、次は「実際に使ってみてどうなのか?」という視点で比較していきます。用途によってベストな選択肢は変わってきます。
ゲームロード時間とPS5への互換性
ゲーミング用途、特にPS5への増設を考えているなら、結論はシンプルです。
PS5用なら「WD_BLACK SN770」一択です。
PS5の推奨速度(5,500MB/s)にはわずかに届いていませんが、実機検証では問題なく認識され、ロード時間もハイエンド機と遜色ないパフォーマンスを発揮することが多くのユーザーによって確認されています。「公式推奨ではないが、安くて使える裏技的SSD」として非常に優秀です。
一方、SN580も認識はしますが、速度が4,150MB/sと低いため、将来的に重いゲームが出た際にロード遅延が起きるリスクがあります。PS5用としては推奨できません。
また、PCゲームにおいてもSN770には「ゲームモード2.0」という独自機能があり、プレイ中のカクつき(スタッター)を抑える効果が期待できます。
発熱温度とノートPCでの電力効率
ノートPCのSSD換装や、外付けケースに入れて持ち運ぶ用途なら、立場が逆転します。
モバイル用途なら「WD Blue SN580」が優秀です。
SN580は電力効率を重視して設計されており、動作時の消費電力が低く抑えられています。これはバッテリー持ちに直結する重要な要素です。また、SN770は高性能ゆえにコントローラーが発熱しやすい傾向にありますが、SN580は比較的発熱が穏やかです。
ただし、SN580もエアフローのない環境では高温になることがあるため、外付けケース利用時は熱伝導シートなどで対策することをおすすめします。
日常使いにおける体感速度の違い
ネットサーフィン、YouTube鑑賞、Excel作業といった日常的な使い方において、この2つに体感できる差はあるのでしょうか?
正直なところ、体感差はほぼゼロです。
前述した通り、SN580はHMBを200MBも確保して最適化しているため、軽作業においては驚くほどキビキビ動きます。「動画編集もゲームもほとんどしない」という方であれば、SN580を選んでもスペック不足を感じることはまずありません。
価格差の縮小とコスパの逆転現象
最後に、最も重要な「価格」についてです。発売当初はSN580が明確に安かったのですが、2026年現在は状況が変わっています。
セール時期や在庫状況によっては、両者の価格差が数百円〜千円程度に縮まっていることが多々あります。時には逆転していることさえあります。
- 価格差が1,000円以内なら:迷わず高性能なSN770を買うべき。
- SN580が2,000円以上安いなら:一般用途ならSN580で十分。浮いたお金でヒートシンクを買うのが賢い選択。
まとめ:WD SN580とSN770はどちらを選ぶべきか
まとめ
- WD_BLACK SN770:ゲームをする人、PS5増設、2TBの大容量が欲しい人、長く使える万能機が欲しい人におすすめ。
- WD Blue SN580:ノートPCの換装、事務作業メイン、予算を極限まで抑えたい人におすすめ。
- 基本的にはSN770が万能の正解だが、価格差が開いている時のみSN580がコスパの王者になる。
- 購入時のリアルタイム価格を確認し、差額が小さいなら迷わず「BLACK」を選ぼう。